研究所にて 2
作:ソンビ

  「コレとかいいんじゃないでしょうか」
「いや、コレも捨て難い」
「折角だから俺はこの服を選ぶぜ」

「おーい」

「う〜ん、コレかな、サイズ的にも一番だし」
「いやいや、このフリルがついた可愛らしい服で」
「このワンピースとかいいんじゃないでしょうか?」

「おいおーい」

「待てよ、この青いパーカーも」
「ボーイッシュらしさがあるのもいいですね」
「だが待って欲しい、ボーイッシュな娘=ボクっ娘という方程式が最近定着しているがそれはまt……」

「……おーい」

「このゴスロリ服とか」
「所長らしさがない」
「……であるからにして、欲求が満たされる事がヒトの本質だとしたらそれは正に、この世界を象徴すべk……」

「……おい」

「やっぱコレですね、所長らしさ全開」
「所長といったらコレか?」
「……の罪を犯した旅人は、夢を追う事を諦め一人の少女に一生を尽くすと約束したt……」

「「コレです! コレを着て下さい! 」」
二人の声が部屋にこだました。
服を持っていた一人がその服をばっと広げると、淡い桃色の入ったワンピースだった。
「コレって、ワンピース?」
「はい、紛れもないワンピースです」
「あまりにもコテコテした物を着させるのもどうかと思いまして」
そういいながら、箱の中にある他の服を見せてくる。
色々な服が出てきたが、どれも色が派手だったり、可愛らしさ全開で自分に似合うと思う物は無かった。
「この中ならまだコレが一番いい、かなぁ」
「ですよね、やっぱり所長と言えばワンピースなんですよ」
「まぁ、ともかく早く着替えてください」
早く着替えろと言われても、
「お前等がこの部屋から出ていってくれたらな」
流石に着替えの途中を見られるのは抵抗がある。
「元男同士の仲じゃないですか、別にどうって事無いですよ」
「所長の身体なんて見ても、どうという事無いですよ?」
「……それは前の話だろ、今の身体は正真正銘女の身体だ、しかもこーんなちっこい」
「別にお前等は見ても何も感じやしないだろうけど、こっちは恥ずかしいんだ!」
そう言うと、泣きながらそそくさと部屋から出て行った。
何がそんなに悲しいのだろうか……。
「ったく、デリカシーの欠片も無い奴らだなぁ」
それというのも、所長の着替えが無いから家から持ってきましたと、3人が服を持ち寄って来たのだ。
娘が着ていた物で、もう合わなくなった物を持ってきたらしい。
2人に娘が居たのは聞かされて知っているが、もう一人は独身だったハズだが……。
「ふ、深く考えない事にしよう」

「……という過程を経て、ボーイッシュ=ボクっ娘という方程式が成り立つのである、まる」
「お前も出て行け」

 

 

別途箱に入ってあった新品の下着に穿き替え、淡い桃色のワンピースを着ると、何か今まで感じた事の無い感覚があった。
「心無しか下がスースーする……」
この身体になってから、服はカプセルに入っていた時に着ていた物をそのまま着用していたのである。
その服も上と下が一体の、首までのタイツの様なただの布といった感じだったのだ(後でわかった事だが外気等から身体を守る、かなり高性能な物質で出来ているらしい)。
スカートの様に、下が開いている物を着るのは初めてだったので、違和感が酷かった。
「は、恥ずかしいぞコレは」
予想以上だった。
「あぁ、やっぱり他の服がいい……」
箱に入っている他の服を漁ってみるが、どれもあまり着たくないデザインの物ばかりだった。
ジーンズがあったが、サイズがどうみても合わない物だった。
「コレしか無いのか、我慢して着るしか無いのか……っ」
ふと後ろにある姿見に目をやると、自分が映っていた。
長いストレートの髪がさらりと垂れており、不自然な程に形の整った顔は、自分で言うのも何だがとても綺麗な物だった。
このワンピースが似合うちょうどいい体系なのもあってか、中々に似合ってあるといえる。
だが、その姿を見てより一層恥ずかしくなってしまった。
「所長、着替え終わりましたか? 入りますよ」
「わ、わ、待ってくれ」
ガチャリとドアが開き、3人が入ってきた。
おぉ〜、と3人の視線がこちらに注目した。
「所長、似合ってますよ、ばっちぐーです」
「ワンピース選んで正解でしたね」
「まままさか、しょちょうにもえるひがこようとはー」
「あ、あんまりジロジロ見ないでくれ……」
慣れるまでは時間が掛かりそうである。

 

 

 

「ワンピースよりも、ジーンズとTシャツがいい」
「却下です」
「却下ですね」
「可愛いくない」
「く……っ」

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