桃色カオス〜前編〜
作:シクノレ

 通販で面白い物を手に入れた。
ゼリージュースとかいう飲料だ。
赤とか青とか黄色とか色々あって、それぞれに味と「効果」が違うらしい。
それだけでも面白そうだったのだが、ゼリージュースについて調べていると妙に怪しい通販サイトを見つけた。
そこで買えるゼリージュースは赤、青、黄色の他に黒や茶色、オレンジといったゼリージュースが販売されていた。
無論、味も効果も違う。
様々な色と効果がある中、俺は最も惹かれたゼリージュースを購入した。
値段は馬鹿みたいに高かったが、騙されたと思って二本買ってみた。
―――ピンクのゼリージュース。
飲んだ者の顔を剥ぎ取り、他の顔面に張り付けることが出来る。
早速俺は家の近くの橋の下で暮らしているホームレス二人で試してみた。
どうやら付き合っているらしい男女二人組だ。
どちらも小汚い格好をしているが不細工と言う訳ではない。
夜中に家をこっそり抜け出すと、橋の下のホームレス達の元へ近寄ってみる。
二人ともぐっすり眠っていて俺には気づいていない。
俺はニヤリと笑うとゼリージュースを適当な量だけ女の方の口へ流し込んだ。
飲ませる時、女が「うっ」と声を上げた時はドキッとしたが起こすことなく飲ませることが出来た。
続けて同じように男の方にもゼリージュースを飲ませる。
しばらく待つと、二人とも熱にうなされたようになり、徐々に二人の顔がピンク色に染まっていく……。
俺は男の方へ近寄ると、思い切り顔を引っぺがしてやった。
驚く程簡単に顔は剥がれた。何だか楽しくて、すぐに女の方の顔も剥がしてやった。
そして女の方の顔を男の身体へ、男の方の顔を女の身体へくっ付けてやった。
「んん?」
何も変わっていない。二人とも元の顔のままだ。
しかし、確かに引っぺがして顔を入れ替えたハズなのだが……。
「ん……」
男の方が目を覚ましたようだ。
俺は気にせずそこで男を眺めた。
「誰よ……? そこにいるのは」
男は眠そうな顔のまま俺を見た。
「何か変ね……。違和感があるわ」
コイツ、オカマか?
女言葉で喋る男を、ついつい訝しげに見てしまう。
「どうしたんだ……?」
続いて、女の方も目を覚ます。
「……え?」
女の方は立ち上がると、自分身体を見下ろして短く声を上げた。
「ど、どうなってるんだ……!?」
「ちょっと、アンタ誰よ!? 何であたし以外の女がココにいるのよ!?」
男が女言葉で女に怒鳴る。
野太い声でその喋り方は非常に気持ちが悪い。
女の方は自分のことで精一杯らしく、男の言葉には耳を傾けていない様子だった。
「胸が……。それに……ない……!」
胸を押さえながら薄汚れたスカートの上から股間を抑えつけている女を見て、やっと俺は状況を把握した。
こいつら、入れ替わってる。
「アンタ……その顔、ケンちゃん?」
ケンちゃんというのは男の名前だろうか。
男(中身は恐らく女)が女を指差して言う。
「由美……その身体どうしたんだ……?」
女(中身は男らしい)が男を指差して口をパクパクさせる。
どうやら俺がやった通りに顔は入れ替わっているらしい。
入れ替わった当人にしか顔は入れ替わって見えないということだろう。
このゼリージュース……本物だ!!
俺は騒いでいるホームレス二人を放置して、その場を走り去った。
これがあれば、最高に面白いことが出来る。
そう確信し、頭の中で計画を練りながら帰宅するのだった。


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